ルクセンブルク大公国は、古くはローマ帝国に始まり、スペイン、フランスなどさまざまな国による支配を受けてきました。ローマ街道の交わる要衝に位置し、ヨーロッパの重要国をつなぐ中心地であったために、各時代の列強諸国がその地の利を手に入れようと争いを繰り広げたのです。
そのような歴史の波をルクセンブルクは強くしなやかに乗り越えていきます。大国の思惑に翻弄されるなか、新しい文化を取り入れては吸収し、自国の文化と融合させながら独自の発展を遂げていったのです。
最古にして唯一の大公国として独立を保っている現在では、ヨーロッパ各地の文化の集合を目にすることのできる歴史的な価値を持つとともに、最先端の国際都市として経済成長をも果たすに至りました。
21世紀以降、国民一人あたりのGDPは世界第一位を維持し続けており、ルクセンブルク大公国のガイドブックには「世界一所得が高い小国の強さの秘密」というコピーで紹介されています。
そうした発展のもとルクセンブルクの食文化も大きく花開きました。立地、歴史的な経緯、生活水準の高さ、そして開かれた国民性といった多くの好条件が重なった希有な状況が、ルクセンブルク大公国を「美食の国」へと成らしめたのです。
フランス料理の優雅さ、ドイツ料理のあたたかみ、スイス、ベルギー産の質の高い素材……。近隣諸国の美点を見事に取り入れているルクセンブルクの食文化は、まさにヨーロピアングルメの粋の結集です。
また経済的豊かさゆえ、ルクセンブルクの人々の食への関心度と評価の基準は非常に高く、レストランの評価はヨーロッパ内でも高い位置を占めます。
ルクセンブルク市にはミシュランの星付きレストランが数多く存在し、国民ひとりあたりの星の数は世界第一位を誇ります。週末には食事のために国境を越えて訪れる美食家も少なくありません。ヨーロッパ中の食通たちによる美食談義で街がにぎわうのも、ルクセンブルク市ならではの光景です。